少年よ

			時野流

君はいつも夢を見ていた
鉄格子のおりの中
壁の意味も知らず
ただ外の世界に思いをはせて

君の仲間はもういない
昨日の食事を運ぶ者の手に
嫌な匂いをかいだのだから

隔離された世界の中
君は確かに存在していた
生きることの意味すら知らず

君はある日 恋をした
君の瞳に、かわいいつぼみを開かせた
小さな赤い一輪の花に

やがて 大きな爆音の嵐がきた
耳に響くざわめき
再び静寂が訪れたとき
君は喰べることの意味をも忘れてしまった

小さな恋人がその生をまっとうしたとき
冷たい風の吹く中
君は深い眠りについてしまった