少年よ 時野流 君はいつも夢を見ていた 鉄格子のおりの中 壁の意味も知らず ただ外の世界に思いをはせて 君の仲間はもういない 昨日の食事を運ぶ者の手に 嫌な匂いをかいだのだから 隔離された世界の中 君は確かに存在していた 生きることの意味すら知らず 君はある日 恋をした 君の瞳に、かわいいつぼみを開かせた 小さな赤い一輪の花に やがて 大きな爆音の嵐がきた 耳に響くざわめき 再び静寂が訪れたとき 君は喰べることの意味をも忘れてしまった 小さな恋人がその生をまっとうしたとき 冷たい風の吹く中 君は深い眠りについてしまった |