貝殻ねこ企画:使い魔 また吉くん


第1話

また吉の日常1  吾輩はねこではない。名前はまだない・・・ 「また吉〜、ねこ缶買ってきたぞ〜、でておいでぇ〜」  あっ、ご主人様だ!  行かねば...。私はご主人様の忠実な僕なのだ。  えっ・この口から出てるのはなにかだっで?  これは、断じてよだれではないぞよ。だんじて(じゅる)。  まあ、姿は猫の形をしているが、私は実は使い魔なのだ。  この、白と青の流れるような毛並みをみれば、高貴さがうががえるというもの。 「また吉って、真っ黒な毛並みにうまれてよかったね」  いや、ご主人様がそうおしゃるなら、黒くいたしましょう。  そう、この黒い毛並みは塗ったものなのだ、だんじて...。  私は、使い魔なのでどんな生き物とでも会話できるのだ。  しかし、「人間界」に来るときに呪文を掛けられたので、人間とだけは会話できないのである。  「じゃ、ねこと代わらないじゃん」という質問にはノーコメントなのじゃ。  吾輩のご主人様は、すごいのじゃ。  なんと、魔界の同期5123人中、2032番目の成績なのじゃ。  えっへん。  いま、吾輩とご主人様は「人間界の和国」に武者修業にきておるのじゃ。  吾輩の力を使って、悪い妖怪をばしばしっとな。  う〜ん。最近の和国は平和でつまらんのじゃ。  はぁ、お腹もふくれたことじゃし、ねますかね。 「また吉、風呂にはいるよう」  ああ、いかん。逃げねば…

第2話

また吉の日常2  吾輩は、使い魔の”また吉”。猫の姿を借りてはいるが、 魔法も使えるスペシャリストなのじゃ。  吾輩のご主人さまは、料理がお好き。  きょうも、豪華にメインディシュは「あさり汁」ですじゃ。  ふむ、料理はあったかぁ〜い、うちにたべねば。  猫舌?なにをおっしゃる。吾輩は使い魔ですぞ。 (ぺろ、ぺろ…) 「あっ、あっづぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅい!」  だっ、だめなのじゃ、こんなに熱いとやけどするのじゃ。  せめて、20度以下までは冷やさねば。子供が真似をするといかんのじゃ。  ああ、ご主人さま、そんなに熱いままたべると「ガン」になりますぞ。  いたしかたない。吾輩は、冷ましているあいだに、あさりの身をほじくるのじゃ。  ふむ、なかなか器用であろう。つぎつぎ剥けていくのじゃ。  猫の爪とゆうのもなかなか、使い用じゃな。  ふむ、このあさりだけ、なぜ蓋をとじておる?  しかし、これも器用な吾輩にかかれば...ふぬぅ〜、あかんではないか。  しからば、上空から加速度をつけて、爪を振り下ろせば……  バシャーン!  よし、お椀がひっくり返ってしまったが、目標の中身は見事にあいたぞな。  どれどれ中身わっと…なんと、砂だらけではないか!  あさりの分際で、吾輩を愚弄する気か!こうしてくれる、こうしてくれる。  1分後。  こなごなになった、あさりの蓋と、満足気な”また吉”くん。  はっ? 「ま・た・き・ち・く〜ん(怒)」  ひえぇ、ご主人さまぁ、お許しをぉぉぉぉ。  その後3日間、また吉くんのお尻は真っ赤に腫れてたそうな。

第3話

また吉のおつかい  吾輩は”また吉”、歌って踊れる黒猫...もとい使い魔である。  今日はご主人さま、お弁当をつくってますのじゃ。  でも、今日の講義は昼から。  なんでじゃろ?  できたみたいでござる。  およ、ご主人さま、そんな大きな風呂敷で吾輩を包まれてはトイレに行けないのである。  ああ、背中がなま暖かい。  いったいなんでござるか? 「じゃ、また吉くん、おつかいよろしくね」  というと、ご主人さまは大学にいってしまったのじゃ。  ふむ、隣の家の”元さん”。昨日、奥さんが喘息で入院したので、今日は外食なのだそうな。  すぐ退院するそうだが、”元さん”は大工さんなので、食事が重要なのじゃ。  しかし、この体勢で建築現場まで行くのはなかなかつらいのじゃ。  ...1時間ご。  やっと、着いたのである。 (元さん、元さん。)  元さんの足元を、突っついているとようやく、気付いてくれたのである。 「おう、隣のたま吉くんじゃないか?!、えっ、弁当かい。」  風呂敷には元さん宛の手紙が付いているので問題なし。  ようやく、身が軽くなったのじゃ。 「おう、たま吉くん!えらいねぇ。」  吾輩は”また吉”である、間違えないで...なっ、なんで吾輩を持ち上げるのじゃ?!  ちょっと、元さん、なぜ顔を近づけ...。  ...ふっ、不覚。  致命傷なのじゃ。ああ、足元がふらふらする。  夕方。  すねている吾輩に、ご主人さまも困ったご様子。  と、チャイムの音と共に元さんが弁当箱を返しにきたようじゃ。  しかし、顔も見たくないのである。 「またきち〜。元さんお礼に”かつお節”くれるってぇ!」  ぴくっ、ぴくっ。(耳が動く音)。  まあ、そこまであやまるなら、許さないことも無いのである(じゅる)。  玄関にでていくと”元さん”のうれしそうな顔。  元さんの腕が伸びてくるが、おっと、もうその手にはのらないのである。 「また吉くん。明日もおつかいよろしくね♪」  うぅ。ご主人さま、かつお節をちらつかせながら、その台詞は卑怯なのじゃぁぁぁぁ。

第4話

トパーズ登場!  まさか、忘れたりしてはおらぬじゃろうな??  ネコの姿は、かりそめの姿。  歌って踊れるみんなのアイドル(?)、使い魔「また吉」さまのお話なのじゃ!!  今日も楽しい散歩から帰ってきたのでござる。  おやっ、我が家に人影が...。  ご主人さまは、大学にいっておるはずじゃし...  まっまさか。泥棒という奴ではあるまいな!  ふん、泥棒など怖くないのじゃ、全然怖くないのじゃ。  いや、しかし冷静に動かねばいかんじょな。(おろおろ)  まず、窓ガラスを割って泥棒の意表をつく...いかん。後でしかられるのじゃ。  う〜む...うーーん...20分経過。  よし、まず相手の顔を確かめておくのじゃ。  幸い吾輩は「猫」の姿じゃから、襲われることはあるまい。 (そろり、そろり) 「おい、こら、そこの猫!!」 (びっっくぅぅ) 「おい、こら、”また吉”逃げるな!!」  なっ、なっ、何じゃ、だれじゃ?  およっ、きっ貴様は”トパーズ”ではないか!!  何をしにきたのじゃ。ご主人さまの護衛は吾輩一人で十分なのじゃ。  足出まといなのじゃ、帰るのじゃ!! 「にゃー、にゃー、うるさいなぁ、これだから”ねこ”は嫌なんだよ。」  うう、貴様。人がしゃべれないのをいいことに。  だいたい、動物の格好で、...、おい、こら。  煙草を吸ってんじゃぬぁ〜〜い。  元さん用の煙草をどこから出してきたのじゃ!!  だいたい、ご主人さまは煙草が嫌いなのじゃ。  それでも、貴様は使い魔か。ああ、嘆かわしい。  それに、近所の人に見られたらどうするのじゃ、まったく。 「なんだよ、その目は。喧嘩ならかうぞ。」  ああ、これだから力だけの馬鹿はいやなのじゃ。  吾輩みたいに、知的に物事を考えられんのかね。 「じゃあ、そろそろ帰るかな?あばよ、また吉。」  おっ、おい。いきなり帰るな。  空間のひずみが大きいのじゃ。  ふう、あやうく異次元に引きずり込まれるところじゃった。  あ、片づけてないではないか。  とにかく、まず空気を入れ換えねば...。  〜☆△△◯▼☆♂◎▽♪〜  ふう、疲れた。これで森林と同じ空気なのじゃ。  つかれたことじゃし、ねるのじゃ(ZZZzzz...)。 「また吉く〜ん。良い子にしてたかなぁ?」  ...はっ、ご主人さまが帰ってきたのじゃ。  何時間ぐらい寝てたのじゃろぅ?  くん、くん。おお、鮭のにおいがするのじゃ。  生で食べれないのが残念じゃが、まあ良しとするのじゃ。 「あれ、また吉。昨日元さん来たっけ?」  ああ、灰皿を片づけてなかったのじゃ!! 「あれっ?この毛は...またトパーズの奴か!しょうがないなぁ。  一度とっちめてやらないと。」  おお、ご主人さま。めずらしく怒っていらしゃる。  でも、ご主人さまのことだから、明日には忘れていらっしゃるだろうし。  トパーズの奴は悪知恵だけは働くのじゃ。  まあよい。今日も夕食は”お魚さま”なのじゃ。(じゅる)

第5話

また吉のお誕生日  ねこねこくろねこ、また吉くんのおはなす、です。  今日は吾輩の誕生日なのである。  めでたいのである。  去年は"鯛"のお刺身で豪華に祝ってもらったのじゃ。  和国ではお祝いごとは”鯛”と決まっておるのじゃ(じゅる)。  が、ご主人さま、今日は”コンパ”なるのもで遅くなるそうな。  ちと哀しいのじゃ。  いや、これはあくびなのじゃ、決してなみだではないのじゃ(うるうる)。  それにしても遅いのである、まさか朝帰りなどということは...。  いやいや、吾輩のご主人さまに限ってそんなことは...。  ああ、お腹がすいたのである。暇なのである。  鯛が食べたいのである。(うろうろ)  あて、なにかにけつまづいたのじゃ。  おお、これはご主人様が集めてきた貝殻の小瓶なのじゃ。  ふむ、閃いたのである。  貝殻を、こうやって、こうやって、こうやると...ほら、鯛の鱗そっくりに並んだのじゃ。  そして、吾輩得意の魔法にて、  〜♀☆▼△◎◇♂▲♪〜  ほれ、ぴちぴちと見事にはねておるではないか。  ふふふ、これぞ「たたみのうえの鯛」という奴じゃな(意味不明)。  どうれ、いただくとするか。(ぱく)  これぞ、カルシウムいっぱい健康食...よけいむなしくなったのじゃ。 (ぴく)  おや、早いのじゃ、ご主人さまが帰ってきたのじゃ。 「またきち〜。ごめんね、遅くなっちゃった。  鯛めし買ってきたからいっしょに食べよぅ。」  おお、やはりご主人さまは世界一なのじゃ!  今日は涙腺がよわくて困るのじゃ。 「あれ、貝殻がちらかってる。片づけの出来ない仔は飯抜きだよ!」  ああ、今すぐ片づけますから、それだけはかんべんなのじゃ。

第6話

また吉の心と秋の空  もしかすると、もしかしたら、もしかして。。。(三段活用)  お久しぶりの黒猫の使い魔、また吉くんの登場です。  今日は、我が家にご主人さまと同じサークルの”沙織”嬢がお見えなのじゃ。  では、吾輩が紅茶をお出ししますのでお二人はソファーで休んでてくだされ。  えっ?  奇妙だから、するな?  ごもっともです。  接客がだめなら...なになに、友達を連れてきたから遊んでくれ?  おお、子守でございますな。  よろしゅうですとも。  お名前は...ああ、”ナナ”殿ですか。  えっ、女性に「殿」は失礼でござるか?  いや、しかし...。  おお白いお肌ですな。  毛もふさふさでうらやましですぞ。  で、いつからそのお姿で?  えっ、生まれてからずっとその姿でございますか。  ということは、根っからの「白猫さん」でございましたか...これは失礼。  では、ナナ殿、外で遊びましょうか。  もみじが色づいて綺麗ですぞ。  ぴゅーーー。  ...風が強いですな。  やはり家の中が安全ですぞ、さあ戻りましょう。  むむっ、ナナ殿いまひそかに笑いませんでしたかな?  ...吾輩の気のせいでござるか。  しかし、ナナ殿。ちと暇でございますなぁ。  ご主人さまたちは、なかなかにおしゃべりが弾んでおるようですが。  およっ?!  これっ、ナナ殿!!  そう体をすりよせるものではありません。  うら若き女性がなんとはしたない...嘆かわしいですぞ。  これっ、やめなさいというのに。  ご主人さまと沙織嬢も笑っているではないですか。    えっ、 「子供ができたらブチかも知れない...」 「あと、グレイとシルバーなんかもいいね...」  って何の話でございますか。  ご主人さま。勝手に想像するのはやめてくだされ。    あっ、これっ、ナナ殿。  そこにすりよってはなりませぬ。  これっ...はぅン...。  ナ・ナ・ど・のぅ〜〜(絶命寸前)。  おやっ、もしかして眠っておいでですかな?  ふう〜たすかったでござる。  しかしこうしていると暖かくて気持ちいいですなぁ。  なんだか、吾輩もねむたく.......  ふにゃ〜よくねたのじゃ。  あれっ、となりにいるのは確か...ああ、ナナ殿ですな。  しかし、こうやって間近でみるとかわいい寝顔ですなぁ。  すり、すり、すり...はっ!!吾輩はいま何をしたでござるか。  しかも、顔がゆるんでいたような(...不覚)。  ああ、ナナ殿いま起きてはだめですぞ。  そうそう、もう少しねててくだされ。  ふぅ〜。 〜 ふと、横を見るまた吉 〜  ああっ、もしかしてご主人さま。見てたでございますか!!  うれしそうに笑うのはやめてくだされぇぇぇぇ〜〜〜。

第7話

また吉の海岸日記1  スポーツの秋、紅葉の秋、食欲の秋でごじゃる。  今日は海でご主人様はサークル仲間とバーベキューなのです。  というわけで、黒猫の使い魔、また吉くんは海にいます。  吾輩は秋刀魚の塩焼きを食べたのじゃ。  ふふふ、旬の味覚はうまいのじゃ。  熾烈な肉争いが終わって、皆も談話モードに入ったのじゃ。  ご主人様も、紗織嬢と話していらっしゃるのじゃ。  でも今日はナナ殿がいないので、吾輩もひまなのじゃ。  まあ、皆の周りにいるとおもちゃにされるので、逃げますかな。  ふむ、さすがに寒くなってきたのでひと気が少ないのじゃ。  おや、そこの影に落ちているのは巻き貝ではないか?  体勢がちと苦しいが、こうしてねこ耳を近づけると、  ほら、波の音が聞こえてくるよね......  いっづぅぅぅい!!  痛いのじゃ。なにかに耳をはさまれたのじゃ。  むむ、ヤドカリではないか。  退くのじゃ、退くのじゃ、退くのじゃぁぁ!!  暴れまわること数分。  ヤドカリくんも、また吉くんも目がまわったようです。 「はぁ、はぁ、てやんでぃ、べらぼうめ。  こちとら江戸っ子でい、家を荒らす奴には容赦しねえぜ。」  ああ、巻き貝はヤドカリさんの屋敷でございましたか。  これは失礼。  しかし、江戸っ子は気が短いのである。。。  お詫びに、なにかいたしましょうか??  えっ、猫になにができるって...疑っておいでですな。  こう見えても、吾輩は使い魔でござる。  多少のことなら無理がききますぞ。  えっ、だったら、生き別れになった娘に会わせてみろとな...むむっ。  よし、しからば...〜▽★◎!▲○=□♪〜。  風の音がやんで、海の中の風景がうかんでくるでございましょう。  おお、あれが娘さんでございますな。  声は掛けられませぬが、旦那さんといっしょで幸せそうではございませんか。  よかったでございますな。  およっ、泣いておられるのですか。  砂が眼にはいっただけ...そうでござるか。

第8話

また吉の海岸日記2  ヤドカリのおやっさんと仲直りをしたまた吉くん。  使い魔の実力たるやなかなかのもの?です。  で、黒猫姿のまた吉くんは、まだ海にいます。 「お若けいの。なかなかやるじゃねえか。見直したぜ。  よし、さっきのことは忘れてやらぁ。」  むむ、このヤドカリのおやじ。ちとむかつくのである。 「で、そのへんてこりんな力で、もう一つお願いしてもいいかね。」  へっ、へんてこりん??  いやじゃ、ぜったいいやじゃ。帰るのじゃ。さらばじゃ。 「おい。まちねぇ、若いのは気が短くて行けねぇやな。。。」 〜気が短いのは、お主もいっしょでござる〜  まあ、話しだけは聞いてやるのじゃ。  ...なになに、知り合いの二枚貝が歯に詰まった異物が取れなくて困ってる。  食事のたんびに痛くて泣くんだとな。  むむ、このヤドカリのおやじ。なかなか他人(?)おもいではござらんか。  そういう申し出であれば、この紳士たるまた吉様が断る訳がなかろう。  で、その二枚貝殿はどこにおられるのじゃ...なになに?!海の底ぉぉぉ...。  吾輩は猫でござるぞ。  いやいやちがう、ちがうぞ、猫の姿でござるぞ。  水の中に潜れる訳が...ふむ。 〜▼※☆♂◎↑▽★□♪〜  よし、ではいくのじゃ。  ばっしゃ〜ん。 (跳んで海に入る秋のねこ:意味不明)。  ふふ、大気が吾輩を包んでおるから濡れないのじゃ。  しかし、寒いのじゃ。  下手に海に入ったら凍え死んでたのじゃ。  おお、ヤドカリ殿。  あの二枚貝殿がそうでございますな。  名医が来たからには、すぐ良くなりますぞ。  さぁ二枚貝殿。お口をおおきくあけて。。。  ふむふむ、ここに異物が食い込んでおるな。  少々切開いたしますぞ。  メス...(爪を伸ばす)。  ふう、採れたのである。  あさりの蓋で特訓(?)した甲斐があったのじゃ。  ああ、少々違和感があるじゃろうが、2・3日で元に戻るのじゃ。  いやいや、そうお礼を言われるとちとこそばゆいのじゃ。  しかし、この異物はずいぶんと、まんまるですな。  石のようでございますが、きれいですな。  さて、これの処分をどうしますかな。  えっ、もし気に入ったなら、もっていってくれ?  お礼するものがないから、是非に...とな。  いやいや。礼などは気にされなくて良いのでござる。  でも、捨てるのももったいないので、せっかくだから頂いて帰りますぞ。  では、二枚貝殿。さらばですじゃ。  ふむ。やはり、地上が暖かくて良いのじゃ。 〜もご、もご、もご・・・〜  ああ、いかん。口の中にくわえたままでござった。  ぺっ。 〜□★▼◎☆▽♪〜  よし、これで魔法が解けたのじゃ。  およっ??  ご主人様が吾輩を探してる様なのじゃ。  ぱく。  しからば、ヤドカリ殿。さらばなのじゃ。  ・・・・・・。  バーベキューが終わって家に戻ってきたのじゃ。 「それで、また吉くんは、どこをふらついてたのかな?」  吾輩がいなくて、ちと騒動になっていたらしい。 「帰りの電車でも、寝たふりしてたよねぇ??」 「しゃべんないんだったら、晩御飯抜きだからね。」  むむっ、ご主人さま。だいぶおかんむりでござる。  早く、わけを話すのじゃ。  ぺろっ。  転がりおちる、丸くて白い石。 「また吉くん、それ...どうしたの?」  今日のできごとをご主人さまにご報告するのじゃ。 「話は分かったけど。また吉くん。それ...それがなんだか知ってるの?」  それは...”天然真珠”というものだそうな。

第9話

パール誕生  黒猫の使い魔また吉くん。  真珠の取扱いに、ちと困っております。  むうっ、ご主人さまにプレゼントしようとしたら、 吾輩がもっておくのがいいと、断られたのじゃ。  しかし、吾輩が持っていてもしかたがないのじゃ。  困ったのじゃ。  まあ、転がして遊ぶのもなかなか...(ねこに真珠)。  ああ、ご主人さまが呼んでおられる。 「また吉くんのお友達をつくるから、真珠をもっておいで。」  おお、いつのまに準備されたのですか?。  では、魔法陣の中央に真珠をおきますぞな。 「じゃ、また吉くん。風をよろしく。」  ふむ、では魔界の森の風を呼びますのじゃ。 〜○☆△♂□♀◎♪〜  はじまりますな。 「魔界を統べる10の精霊王に申しあげる。  この寄代に  ふさわしき形を与えん  かよわき命を与えん  静かなる魂を与えん  精霊の力をもって、ここに姿と成せ!!」  こっ、これは...。  ハツカネズミではござりませんか。  なかなかキュートでござる。  んっ?なぜ、吾輩のほうに寄ってくるでござる。 「ああ、また吉くんが母親役だね。」  まっまさか、いんぷりんてぃんぐというやつでわ。およよ。 「じゃ、大学にいってくるからちゃんと世話をするんだよ。」  えっ?ちょっとご主人さま??  ああ〜、いってしまわれた。。。  しかし、こやつ。  なかなかよく動くのである。  右にいったり、左にいったり、右にいったり、左にいったり。。。  うず、うず。  てやっ!!(かぶっ)  およよ。堅いのじゃ、歯が欠けたのじゃ。  いや、まてまて。  なぜ吾輩は、こやつをくわえてるでござる...(汗)。  きっと、ご主人さまが防御呪文をかけたのですな。  しかし、こやつの世話は疲れるのじゃ(精神的に)。  ご主人さま、はやく帰ってきてくだされぇ。  ......。  おお、ご主人さまが帰ってきたのじゃ。 「また吉くん、ちゃんと世話して...歯がだいぶ欠けてるねぇ。」  まあ、一日あれば元に戻るからいいのでござるが。 「それは、そうと。この子の名前なんだけど...」  吾輩も考えたのじゃ。 ”ちゅー太”がいいのじゃ。絶対”ちゅー太”がいいのじゃ。 「シンプルに”パールくん”に決定ね。」  なっ、なっ、なっ、なぜじゃ〜

第10話:最終話

また吉くん、ふぉえばぁー!  黒猫の使い魔また吉くん。  今回は大事件の捜査中なのです。  事件は最初、元さんの大けがから始まった。  突然、建築中の屋根から木材が落下して、元さんを直撃したのじゃ。  元さんは、いまも病院で意識不明の重体。  奥さんまで、ショックで体調をくずしておられる。  次が紗織嬢の愛猫、ナナ殿の失踪。  そしてさらに、姿を消していたパールくんが、無惨な姿で玄関に放置されていた。  明らかに、ご主人さまを取り巻く人達に危害を加える何者かの仕業なのじゃ。  思い当たる節はあるのじゃ。  最近ご主人さまは、魔界への和国留学における論文を書くために、 酒呑童子について調べておったのじゃ。  そして、どうやら酒呑童子は実在の「鬼」ではないかという結論に達しつつあった。  ...事件がはじまったのは、この頃からなのじゃ。  そして、今日。ご主人さまがいなくなった。  玄関に落ちていた手紙には、紗織嬢が人質になっている旨が書かれていた。  一大事なのじゃ。  ご主人さまは、ひとりで救出に向かったらしいのじゃ。  背に腹はかえられん。  ここは、トパーズの力も借りるのじゃ。  トパーズが魔界から到着。  そして、吾輩の縛鎖と、トパーズの縛鎖を解く。  トパーズは、西洋人より鮮やかな金色の髪に、褐色の肌。  身長190cmの強靱な身体なのじゃ。  吾輩は、銀に近い白髪の合間に、青色の髪が流れるように筋を引いておるのじゃ。  身長は160cmほど、透き通るような白い肌なのじゃ。  いや、いや、人型の紹介は後でいいのじゃ。  ご主人さま。今助けにまいりますぞ。  この社でございますな。  妖気が異様なまでに高まっておるのじゃ。  きっと、たくさんの妖怪が待ちかまえておるのじゃ。  ああ、トパーズ!!  正面から突っ込んではいかんのじゃ。  トパーズっっ!!  案の定。トパーズに無数の妖怪が襲いかかる。  いくら、お主が強靱でも数には勝てんのじゃ。  トパーズは、こちらを見て「にやり」と笑った。  そうしている間にも、妖怪と自身の血で、真っ赤に染まっていく。  分かった。  お主の意志は無駄にはしないのじゃ。  吾輩は社の裏から忍び寄る。  ああ、ご主人さまと紗織嬢が鎖につながれているのじゃ。  お二人とも意識がないようじゃ。  むぅ、いかん。紗織嬢の気配が弱まっておるのじゃ。  敵の気配はなかった。  罠かも知れんが、トパーズの気配も弱まっておる。  今ご主人さまを助け出さねば、どちみち後はないのじゃ。  吾輩は風を身にまとって、一足飛びにご主人さまの元にたどり着いた。  ご主人さま。目を覚ましてくだされ。  さあ、いま鎖を...ぐふぅ。  吾輩の身体をつらぬく長い爪。どうやら、致命傷らしい。  やはり、罠でござったか。  せめて、敵の顔を。。。  ぬう、敵の正体は「化け猫」でござったかぁ!!  む。その顔に残る面影は...まさか、ナナ殿でござるか??  ナナ殿。ナナ殿がいったいなぜ...。 「またきち!!大丈夫かい。」  ああ、ご主人さま。意識が戻ったのですな。 「僕のことはいいから、はやく逃げるんだ!!」  吾輩は、お役に立てなくて面目ないのである。  しかし、ただでは死にませぬぞ。  敵に一矢報いなければ...。  さあ、ナナ殿。吾輩とともにあの世に参りましょうぞ。 「またきちぃーーー!!」  ......。  ああ、ご主人さま。そんなに哀しまないでほしいのですじゃ。 「....くん。..きちくん。またきちくん。」  んっ??  なんだか、意識がだんだんはっきりしてきたのじゃ??  およっ。  まぶしいのじゃ。  朝なのじゃ。  我が家なのじゃ。  ご主人さまなのじゃ。 「はいはい。いつまで寝ぼけてるのかなぁ?」 「はやくしないと置いていくよ。今日は梅の木の精霊さんに、お話を聞きに行くんだからね。」  おお、そうでございましたな。  はて?なにかたいそうな、夢をみていたような。。。  いやはや。吾輩はいつまでもご主人さまといっしょですぞ!!  これ、パール。寄ってきてはならんのじゃ。  今日はおとなしくお留守番するのじゃ。 「またきちく〜ん。はやく〜。」  ああ、ご主人さま。いま参りますのじゃ。 〜また吉くんの変わらぬ日常に祝福を...Fin。〜