初恋 時野 流 入学式、新たな人生の始まり 僕はひとり 舞い散る桜吹雪に誘われて 校舎の裏手へと... 乳白色の風の中 年老いた桜の樹の下 長い髪をそよそよと泳がす少女がいた 陰影を交じえた木漏れ日に 確かに美しさを備え始めた少女は 桜の老木と溶けあって 1枚の神秘的な「絵」を構成していた 僕と懐のカメラは その美しさに目を奪われ その場に立ちすくんでいた 閉ざされた時間 思考の再動。 それは少女の微笑みによって もたらされた 無防備にも おもえうる そのさわやかなまでの挨拶が 少女の全てを物語っていた その時僕は確かに恋をした |